クレームは商品やサービスを改善するための貴重な機会です。一方で、理不尽な要求には適切な線引きも求められます。本コラムでは、クレームとカスタマーハラスメントの違いについて考えます。

どんなに評判の良い企業であっても、クレームが一切ないという組織はありません。むしろ優良な企業ほど、クレームを真摯に受け止めて反省、改善に努め、成長の糧にしていると言っても過言ではないでしょう。「クレーム(claim)」には「要求」「主張」という意味がありますが、一般的には「文句」「苦情」といったマイナスのイメージが強く、限りなくゼロに近い方がいいという認識で広がっているのも事実です。
今回は令和7年度前期の3級 問題3(5)、2級 問題2(5)から見ていきましょう。
問題3.次の用語の説明として適切なものを選択肢から選べ。(3級)
(5)カスタマーハラスメント
【選択肢】
正解:ア (正答率 91.5%)
問題2.次の問に答えよ。(2級)
(5)クレーム発生時のお客さま対応や再発防止に関する記述として、最も適切なものを選択肢から選べ。
【選択肢】
正解:エ (正答率 86.8%)
お客さまが求めるものを理解したうえで、商品・サービスを提供することにより満足度を高める「お客さま第一」の姿勢(3級テキスト 第1編 第2章参照)は大切ですが、お客さまの要望すべてに沿うべきという意味ではありません。
上記の問題にある「カスタマーハラスメント」は「クレーム」とは異なるもので、暴言を吐いたり、理不尽な要求を突き付けたりなど、悪意を持った嫌がらせを指します。最近ではSNSなどを介して、悪評や誹謗中傷を拡散させるなどの手口も多くなっています。
クレームがカスハラと異なるのは、問題を発見したお客さまがそれを指摘することにより、受けた側が真摯に反省して改善努力をし、問題解決に向かうことができる点です。つまりクレームを通してお客さまと良心的な信頼関係が構築できることにあります。悪意のあるカスタマーハラスメントでは信頼関係は生まれません。
接客時、スタッフの説明や案内に不手際があり、お客さまに迷惑をかけてしまったケースなどはクレームになりがちです。その際もスタッフの非が明らかな場合は、お客さまの感情を受け止め迅速におわびすることで、ほとんどのケースは収まりますが、例外的にカスタマーハラスメントに発展することがあります。たとえば暴力など身体への攻撃はなくても、暴言や過度な謝罪(土下座など)の強要、さらにはその様子を撮影した動画をSNSにアップするなどの精神的な攻撃も、カスタマーハラスメントに該当します。
ハラスメントは、行為を行う側に悪意がなくても、受け取る側が不快な思いをしたり、苦痛を感じたり、尊厳を傷つけられたと感じる場合は成立します。それはお客さまの行為であっても、受ける側が我慢するべきものではありませんので、躊躇なく職場の上司などに相談しなくてはなりません。
企業には、従業員が安心して働けるようカスタマーハラスメントを防止する義務がありますので、相談先(上司、担当者等)を決めて従業員に周知しておくことや、クレームとは区別した対応マニュアルの整備や研修も進められています。
一過性のお客さまであっても、気づいたことを好意的に捉えて改善につなげる意見を寄せる人はいます。そういうお客さまは一時的な感情で不平や文句を言うのではなく、冷静に対話ができるケースが多いと言えます。職場で共有して改善に活かす姿勢を忘れずに持ち続けたいものです。
「クレームは宝の山」という捉え方で成長につなげた企業もありますが、クレームは企業にとって貴重な改善のきっかけになり、顧客との信頼関係を強化し、顧客満足度を向上させるチャンスであるという考え方です。「お客さま第一」=「お客さまは絶対」ではないことを双方の立場で認識する指導が、企業や学校には求められます。
前述のとおり、問題を発見したお客さまからのクレームを機に企業が改善を図り、問題解決に向かうことが理想ですが、クレームの域を超えた非難や誹謗中傷はカスタマーハラスメントそのものであり、ケースによっては犯罪行為になることを知っておきましょう。