失敗や責任を避け、判断を上司に委ねる方が楽だと考える若年世代が増えています。本コラムでは、出題事例を通して、自ら考え挑戦する姿勢の大切さと一歩を踏み出す意味、また顧客意識とのバランスを考えます。
入社1年目の社員にとって大切な心がけの一つは、担当業務の流れを把握し、「正確かつ確実」に業務を遂行できるようになることです。そのためには、上司や先輩の指示を的確に理解することが重要ですが、わからないことや疑問に思うことはその都度質問し、相談しながら進めることを怠ってはいけません。

ところが、最近の複数の調査データでは、失敗することを嫌い、責任を負うという心理的負担を避けたいため、仕事上の判断はすべて上司に委ねる方が楽と考える若年世代(いわゆるZ世代)の人が多くなっています。近い将来にリーダーとして組織の柱となるはずの世代に、責任の重い管理職になることを望まない風潮があるのは大きな問題ですが、その背景には何があり、その意識を変えるために何が必要かについても考えてみたいと思います。
まずは、令和7年度後期の3級問題を見てみましょう。
問題6
岡村誠は、大手旅行会社「ナイスホリデー」に勤務して10ヵ月の社員である。現在はM県T市の営業所で、所長の杉山のもと、先輩社員の横井の指導を受けながら、個人のお客さまの対応を行っている。ナイスホリデーは有名観光地へのツアーを多数企画・販売するほか、営業所が中心となってその地域の特色を生かした体験型ツアー企画も積極的にアピールしており、人気が高まっている。
2月2日の月曜日の午前、岡村が営業所のカウンターでお客さまの対応をしていると、先日、当社のツアー「城下町Fを歩く」に申し込みをされた田島さまが来店された。
ナイスホリデーでは、営業所でお客さまから受注したすべての旅程を本社のシステムで一元管理し、営業所のサポートも行っている。岡村はこれまで、すでに予約が確定している旅程にオプションを追加する処理を行ったことがなく、手続きがわからなかった。横井に確認しようとしたがお客さまの対応をしており、他のカウンターも忙しく、声をかけることが難しい状況である。杉山もツアー企画の打ち合わせがあり外出していた。
【選択肢】
正解:ア (正答率 72.0%)
「顧客意識」(3級テキスト P.24)と、「仕事への取り組み方」(同 P.18)の2つの視点から考えてみましょう。
まず、「お客さま第一」の姿勢を優先し、田島さまからの変更の要望に対して、迅速かつ正確に処理することを考えると、選択肢の中ではアの対応がベターと言えます。選択肢イは、横井が対応中のお客さまを岡村が途中から担当するとしても、そのお客さまを中途半端に待たせてしまうことになりかねず、選択肢ウは、自社の一方的な都合で田島さまを待たせてしまうことになります。
では、仕事を通して成長を目指すキャリアアップの視点から考えるとどうでしょう。選択肢イ、ウともに、経験がないことを理由に、自分で処理することを避ける内容になっています。「失敗したくない」や「お客さまの迷惑になりそうなことは避けたい」という理屈は、言い換えれば「失敗を責められたくない」や「失敗の責任を負いたくない」というネガティブな姿勢であると同時に、成長機会を自ら逃しているに等しいと言えます。アのように、お客さまの前で緊張感を持って未知の業務にチャレンジすることで、身につけられる仕事もあります。

今回のケースは、入社1年目の社員に予約内容の変更や追加処理の経験がないという、初歩的なオペレーションの問題でしたので、正解者が多かったと思われます。仮に、田島さまの変更内容が込み入っていて自分の判断では対応が難しいという場合、選択肢イのように先輩社員に相談して、対応を代わってもらうことは間違いではありません。その場合も、可能であれば同席して先輩社員の対応を見て学ぶことが大切と言えるでしょう。
上司(管理職)の立場で、相談を受けたときに過去の経験などから、適切な回答(結論)を出して指示してしまうことがあります。しかし、これが常態化してしまうと、“判断はすべて上司に委ねる方が楽”という部下の依存意識を助長しかねません。仮にそれが悪い結果になっても、「自分は指示に従っただけで、結果は上司の責任」という解釈をしがちです。当事者意識を持つことなく仕事を続けても、個人の成長につながらないことは明らかと言えます。
テキスト(3級P.53)にも説明がありますが、一般的に相談される側はあくまでも「ヒント」になるアドバイスをするスタンスで受け、最終決断は相談者本人に出させ、社内的には説明責任を果たすという意識づけが重要です。いい結果が出たときには、成功体験として自信になりますし、悪い結果が出ても自分事として捉えて改善に努め、次につなげることができます。
次回は、上記ケースの(2)の設問を取り上げ、仕事の責任についてもう少し考えてみたいと思います。