団体担当者様への情報発信
「当事者意識と責任感」を自覚したチャレンジを支えるリーダーシップ
2026.2.27 Vol.16

「自分で考えて動いてほしい」と願う上司と、失敗を恐れる若手社員。本コラムでは、B検の出題事例から、「当事者意識」と「責任感」を育てる指導のあり方を考えます。そのすれ違いを埋める鍵は、挑戦を支えるリーダーシップと心理的安全性にありました。

前回は入社1年目の社員が仕事に取り組むときの心がけについて、出題事例をもとに考察しましたが、指示待ちの姿勢を維持していてもキャリアアップは望めません。たとえ対外的な責任を負う立場ではなくても、指示された業務には「当事者意識」をもって主体的に取り組み、指示者(上司)に結果報告をするまでが社員の責任という自覚を持って取り組むことが大切です。

B検 News Plus Vol.16

事案によっては中間報告も交え、必要に応じて相談しながら進めることが、トラブルの回避や社内外での信頼構築につながります。

前回のケースのつづきを見ていきましょう。(令和7年度後期3級)

問題6(続き)

修正した旅程表をお渡しして、田島さまはお帰りになった。その後、午後になり定例の企画会議が行われ、杉山から新しいツアー企画の説明があった。

 *以下、紙面の都合で、問題文を筆者要約

 〔企画会議および打ち合わせ要旨〕
 ・「農園・暮らし・食」体験ツアーの企画を実施することになった。(杉山)
 ・企画は横井を中心に進め、岡村は横井と協力し進め方を学ぶよう要望する。(杉山)
 ・農園や料理専門家との調整は横井担当、貸し切りバス手配は岡村担当とする。(横井)
 ・バス会社「安全交通」の貸し切りバスを利用する予定。

杉山
「岡村さん、2月10日までに貸し切りバスの見積書が必要になります。書面で見積もりの依頼やバスの手配をするさいは、事前に横井さんの確認をもらってください。」
横井
「安全交通は村田さんという営業担当者が当社の窓口です。」

岡村はこの日の夕方に村田へ電話をして貸し切りバスの見積もりについて話をした。

村田
「いつも当社のご利用ありがとうございます。今回の貸し切りバスのお見積もりについて承知しました。日付と旅程、現時点で最大とお考えの人数を教えてください。御社からいつも送っていただいている依頼書がありますので、そちらを参考にしてご連絡をお願いします。」
岡村
「承知しました。スケジュールと人数を整理し、あらためて連絡します。」

村田に伝えるべき情報は理解したが、依頼書の作成は岡村にとっては初めてであり、先の見通しを立てられないまま電話を終えた。

(2)
岡村は依頼書の作成をどのように進めたらよいか、もっとも適切なものを選択肢から選べ。

【選択肢】

ア.
横井に安全交通の村田と話した内容を伝え、次にするべきことの具体的な説明を待つ。
イ.
村田に連絡する必要がある情報を整理し、不明な点や具体的な書類の作成方法を横井に確認しながら進める。
ウ.
なるべく早く見積もりを入手するために、他のツアーで安全交通に提出した資料を参考に書類を準備し、作成でき次第、村田に提出する。

正解:イ (正答率 90.8%)

リーダーシップとメンバーシップの観点

まず、この選択肢を深掘りして学べることを、考えてみましょう。(2級テキスト P.64)

選択肢アは、主体的に取り組もうとする当事者意識に欠けており、完全な指示待ちの姿勢です。アルバイトとは立場が異なりますので、話した内容を報告するだけでなく、次に自分がすべきと思うことを申し出る主体的な姿勢が求められます。

選択肢ウの、「他のツアーで安全交通に提出した資料を参考に書類を準備」することは大切な仕事の進め方の一つと言えますが、横井のチェック(確認)を受けてから先方に提出するように、という杉山の指示は守らなくてはなりません。社外文書は、担当者が会社を代表して作成するものという認識を持ち、上司のチェックを受ける必要があります。

この選択肢のように、過去の資料やデータを参考にし、自分で考えてできるところまで作成してみる姿勢は大切です。その際、先輩、上司に確認したいことや、作成上の疑問点などを整理してから相談すると、仕事を早く覚えられます。

たとえば、今回のケースの場合「相見積もりはとらなくてよいか?」「貸し切りバス予算の上限はいくらぐらいか?」などを作成前に確認しておくと、バス会社からの問い合わせにもある程度対応ができます。また、過去の依頼書にはなくても新たに追加した方がいいと思われる項目が出てきた場合、それを提案するなど、気づいたことがあれば率直に先輩や上司に聞いてみることが大切です。上司の指示が常に完璧というわけではありません。

指示する時に大切なこと

では、上司や先輩社員の立場から指示するときに大切なことは何かを考えてみましょう。若い世代に「失敗したくない」という意識が強い傾向があることは前回述べたとおりです。これは「責任」は「持つ」ではなく「取る」という懲罰的なイメージが先行しているからとも言えそうです。

仕事上で担当者(部下)に「責任を持たせる」とは、担当者の主体性を認めて責任ある仕事を任せることです。つまり担当者には責任を持つ力があると判断して信頼することだとも言えます。

ところが、計画どおりに進まず、悪い結果が出たときに、一方的に担当者を叱責する状況が続くと、次は挽回しようという担当者のチャレンジ意欲を低下させてしまいます。そうならないためには、悪い結果が出た場合の責任は指示を出した側(上司)が持つということを最初に伝え、担当者の心理的安全性を保つことが重要です。その前提があれば、担当者は不安を払拭し、モチベーションを高く維持して業務に打ち込むことができ、上司への質問や相談もしやすくなるという好循環が生まれます。これがチームワークを発揮する環境づくりにつながり、目標を達成するためにリーダーが果たす重要な役割の一つにもなると言えるでしょう。

本人の成長のためという理屈で、「自分で考えよ!」と突き放すのではなく、「一緒に考えてみよう」という歩み寄りの姿勢が、今の若い世代には有効という調査研究結果もあります。

つまり、悪い結果の報告を受ける上司にとって大切なことは、担当者の責任を追及することではなく、「担当者と一緒に原因の究明をする」ことです。多くの場合、複数の要因が関わっていますから、指示の仕方も含めて上司や先輩社員が率先して原因を究明し、チーム全員で共有する必要があります。

原因を明らかにした後は、対策を考え前向きな結論を全員で共有すれば担当者のチャレンジ意欲も維持されることでしょう。

演習例
新人(社員orアルバイト)教育(指導)の担当社員が直面する下記の事例から、解決策を話し合ってみましょう。各業種で、よくある場面を設定して考えてください。
1.
「わからないことがあったら、何でもすぐに聞いてほしい」と言っても、ほとんど誰も聞いてこない場合
2.
本人は真面目に取り組んでいる様子だが、同じミスを繰り返す場合
3.
業務を指示しても、「どうすればいいですか?」と、すぐに答を聞いてくる場合
(元 金沢星稜大学女子短期大学部教授 山本 航)
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