表計算ソフトは便利ですが、正しい資料を作るには数字の意味を理解する力が欠かせません。「割合」と「ポイント」の違いや、数値の増減をどう読み解くかによって判断は大きく変わります。B検の問題を題材に、数字を正しく読み取るポイントを考えます。
学校では主に数学や理科、簿記などの教科で数字を扱って学習しますが、社会人になると業種や職種を問わず、多くの仕事で数字と向き合うことが日常になります。表やグラフなどの資料を作成するだけが仕事ではなく、そこに表されたデータから何を読み取り、今後の仕事にどのように活かしていくかが大切になります。

データが表やグラフによって可視化されると、過去から現在に至るまでの数値の変化がわかりやすくなります。単に数値の増減だけを捉えるのではなく、その理由や傾向なども正しく読み取ることができれば、将来を予測して対策も立てやすくなるわけです。
たとえば、レストランAの売上高は10月が1,000万円、11月が1,500万円、12月が2,100万円だったとすると、金額の前月比では11月が+500万円、12月が+600万円となり、増加額は伸びていますが、増加率の前月比では11月が+50%、12月が+40%となって低下しています。
これがグループ企業の1店舗だった場合に、グループ内の他店舗と比較することで似たようなケースがあります。
今回は令和5年度前期試験の2級問題を見てみましょう。
問題7.
次の<資料1>、<資料2>、<資料3>は、中華料理店、焼肉店、海鮮料理店を運営するA社の、・・・(中略)・・・。
これらの資料を見て各問に答えよ。
<資料1>売上高と営業利益の推移

(1)<資料1>から読み取れる記述の正誤の組み合わせとして、適切なものを選択肢から選べ。
【選択肢】
| ① | ② | ③ | |
|---|---|---|---|
| ア | 正 | 正 | 誤 |
| イ | 誤 | 誤 | 正 |
| ウ | 正 | 誤 | 正 |
正解は、ウ(2級テキスト 第3章、第5章)。
解答率は ア:72.4% イ:3.4% ウ:24.1%でした。
着目すべきは選択肢 ア を正しいと判断した解答者が、選択肢 ウ(正答)のほぼ3倍いることです。
アとウの違いは、②と③の答が正反対になっていることですが、誤答の要因となっているのは「割合」や「ポイント」という用語を正しく理解していないことだと推察できます。
設問②の「最も割合が高いのは」という記述を読んでグラフに目を移したとき、3年間すべてで中華料理店の金額が他の店舗より多いのは一目瞭然です。さらに「割合」も他店と比較した場合に最も高い(多い)のもすぐにわかります。
そして、そのあとの「割合は2021年に低下した」という記述を判断するとき、金額が2020年の5,800万円から5,500万円に減少していることに目が行き、それを「割合」の減少と捉えてしまった解答者が多かったのではないかと思われます。海鮮料理店が営業開始したこともあり売上高全体も増加したため「割合」(→全社売上高に対する中華料理店の売上高構成比)は68.2%から57.9%に低下しました。
そのあとの「2022年に増加している」は、多くの解答者は金額の増加(5,500万円から6,000万円)に目が行き、「割合」も増加しているものと思い込んで正しいと判断したことが推察されます。実際には、金額は500万円増加しましたが、「割合」は57.9%から50.0%に低下しています。
設問③については、「2ポイント」という表現がわからない解答者はいたかもしれません。③の場合、後半を「2020年から2%減少している」とした場合、「2020年の営業利益率(実際には10%)のうちの2%減少している」、すなわち、10‐(10×0.02)=9.8 で9.8%になったとも解釈できてしまい、誤解を招かないようにするため、10(%)から8(%)になったという具体的な数値の変化を示す「ポイント(pt)」という表現を使っているわけです。
たとえば下記のように、誰もがイメージしやすい身近な店舗営業などを例にして、2カ月(または3カ月)の売上高を比較できる表を作成して教材にしてみましょう。
上記の設問で使われている「割合」という用語は「売上構成比」を指していますが、用語の意味を正しく理解するために、暗算や手計算でも答えを出しやすい数値設定にすることで、どの数値同士を演算すればよいかが容易に整理できると思います。
キッチンカーの売上高集計 (※商品Dは10月からの新メニュー)
| 9月売上 (千円) |
構成比 (%) |
10月売上 (千円) |
構成比 (%) |
増減額 (千円) |
前月比 (%) |
伸び率 (%) |
|
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 商品A | 1,800 | 45 | 2,400 | 40 | 600 | 133.3 | 33.3 |
| 商品B | 1,200 | 30 | 1,500 | ||||
| 商品C | 1,000 | 25 | 1,200 | ||||
| 商品D | 900 | ||||||
| 合計 | 100 | 100 |
学校や職場内研修における指導では、なるべく身近な事例を用いてリアリティを感じながら学習することをおすすめします。学校なら学園祭の模擬店売上の損益分岐点を探るなど、楽しく演習できそうですね。