企業は、価格だけでなく、顧客が何に価値を感じているかを見極める必要があります。今回は2級問題を題材に、顧客ニーズの読み取り方と自社の強みを生かした販売戦略について学び、演習を通じて理解を深めましょう。
昨今の物価上昇は、さまざまな条件が連鎖しており、企業努力だけでは価格を抑えられない社会的背景があります。
食料品に代表される、日常生活には不可欠で購買頻度が高いものは「なるべく安くて良いもの」を購入したくなるのが自然です。一方で、衣料品や嗜好品、ぜいたく品などは、必ずしも安価なものが好まれるとは限りません。

かつて、大手のハンバーガーチェーンや牛丼チェーンが、低価格競争を展開した時期がありました。その結果、値下げにより利益が落ち込んだだけでなく質の低下も招き、顧客離れが進んだため、戦略の転換を余儀なくされることになった経緯があります。
今回は、令和6年度前期の2級問題を見てみましょう。(問題6、(1)~(4)までの問題文および設問は省略)
コーヒー教室は2回ともほぼ満席となり、受講者からの評判も上々だった。
柴田と鈴木は、営業会議での報告に向け、鈴木がまとめた受講者アンケートの結果と、受講者に配布した商品券の利用状況をもとに、打ち合わせを行った。

【選択肢】
正解:ウ (正答率83.6%)
選択肢の ア および ウ が、価格についての取り組み案ですが、まず選択肢 イ については、経営理念やアンケート結果から読み取れる内容ではないため、適切とは言えません。
ア の「風味よりも価格を重視した低価格帯」は、「高品質なこだわりのコーヒーを提供」するという理念と相反するため、やはり適切ではありません
ウ は、「価格がやや高い」という45%の回答者の声に応えて定額制にすることで、「毎日1杯程度」および「毎日2杯以上」を合わせた86%の利用者の頻度が今以上に高まり、「種類が豊富でおいしい」という回答者の満足度もさらに高くなると期待できます。現実的には、定額の価格設定が最も難しい経営判断になりますね。
利用客アンケートの目的は、隠れたニーズの把握だけではなく購買者目線での商品やサービスへの不満を知ることによって改善を図り、顧客満足度を高めることです。
今回のケースで言えば、現状の顧客にとってのコーヒーの楽しみ方(嗜み方)は、何に重点を置いているかがわかるリサーチでした。つまり、どこよりも安価に入手できることに重点があるわけではなく、他店にはない種類の豊富な豆や、雰囲気の良さが支持されるポイントだと読み取れます。これは他店にはない自店の強みですから、さらにレベルアップを図ることが、売上拡大や口コミ等による新規客獲得には不可欠と言えるものです。
先述した低価格競争の事例でもわかるように、「より安く!」を過度に追求しすぎると、「安かろう 悪かろう」が定着し、客離れと売上低下が加速します。心理的価格設定の一つに「名声価格」がありますが、価格の高い商品(たとえば宝石、貴金属類)は価格自体が品質の指標になります。適正な高価格設定が品質保証の役割を果たすことを理解しましょう。
非価格経営を定着させた企業の例としては、「茶師十段」の資格取得で社長自らをブランド化し、「茶師十段之茶」「茶師十段のかき氷」などで話題のS社(東京都世田谷区)や、風速15mの強風にも耐えられる、1本8,000円以上の価格がついた透明ビニール傘を作り、宮内庁御用達にもなったH社(東京都台東区)などがあります。
*参考:坂本光司「もう価格で闘わない」(あさ出版 2021年)
「なぜ、こんなに高価格なのか?」「なぜ、高価格でもこんなに売れるのか?」など、利用客の声に耳を傾けながら理由を考える習慣を身につけることが大切ですね。
*参考:2級テキスト 顧客満足を高めるための情報収集(P.48~49)、統計・データの読み方(P.96~97)
大手ハンバーガー&ドーナツのコラボ店「A」の近隣に、単独のファストフード店「B」が出店することになった。「B」が価格競争を避けて顧客確保と売上拡大を図る具体的なアイデアを自由に考えてみましょう。
| A店 | B店 | |
|---|---|---|
| 立地 | ・利用者の多い駅前 ・近隣に大学、専門学校 |
・駅から徒歩15分 ・近隣に工業団地と住宅街 |
| 主力商品 |
・ハンバーガー、ドーナツ (200円~) ・コーヒー、ジュース (150円~) |
・自家製ドーナツ&ハンバーガー (300円~)、菓子パン(250円~) ・コーヒー、自家製ジュース等 (250円~)、自家製スープ(350円~) |