団体担当者様への情報発信
分析で終わらせない ~数字の先に課題を見つけ、次の一手へ~
2026.8.20 Vol.21

データを集め、分析することは、ビジネスにおける課題解決の出発点にすぎません。大切なのは、数字の背景にある課題を読み取り、改善や新たなアイデアにつなげること。今回は販売促進イベントの事例から、データを「次の一手」に変える考え方を紹介します。

多くの会社では売上アップを図る手段として、広告宣伝をはじめ、さまざまな販売促進活動を行っています。最近は「eコマース(電子商取引)」の普及で、業種や商品によっては店頭での対面販売の割合が減少傾向にありますが、新規顧客の開拓やリピーターを増やすことを目的とした「販売促進イベント」の開催は、ニーズを把握して顧客満足度を高める視点からも効果的と言えます。

B検 News Plus Vol.21

Vol.18では、各種のデータが示す数値から、隠れている特徴を読み取るときの留意点について取り上げました。今回は、販売促進イベントを実施して得たデータから、傾向や特徴を把握した上で課題を見つけ、新たなアイデアにつなげる過程について整理してみましょう。

令和8年前期2級の問題6(5)を見ていきます。

問題6.次のケースを読んで各問に答えよ。

林美咲は、A市内で5店舗を展開している青果店「ワンダフルベジタブル」に入社して3年目の社員である。

 〔問題文、設問(1)~(4)、資料省略〕 

(5)
林が山田課長に行う報告内容として、最も適切なものを選択肢から選べ。

【選択肢】

ア.
参加型アクティビティは平日の開催日でも効果的な集客が認められるので、平日の開催頻度を増やし、賞品を増額することで話題性を高める。
イ.
イベント期間中、B駅前店近隣の中学校や高校の家庭科の時間に果物や野菜の調理の出前授業を行うことで、若年層にフルーツの美味しさを浸透させる。
ウ.
イベント期間の後半に購入者数が増加しているので、前半にSNS映えするフォトスポットを設置し、お客さまがSNSで拡散したくなるような仕掛けを作る。

正解:ウ (正答率 80.1%)

上記の問題の着眼ポイントは、収集したデータから客観的事実として読み取れることが書かれているかです。それぞれの選択肢の後半は、次回に試みたいアイデアが提案として書かれていますが、今回の結果を受けての改善内容であれば、上司は可否を判断しやすくなるものです。

選択肢のアは、前半の記述にデータ読み取りの誤認があり、選択肢のイは、データに基づく提案になっていないため、いずれも最も適切な報告内容とは言えません。選択肢のウについては、期間後半の数値に着目し、イベント参加者がSNSで情報拡散することを想定したアイデアになっていて、理にかなっていると言えます。ただし、アやイのようにデータを読み違えている、あるいは基づいていないという理由だけで提案が却下されるということではありません。たとえば、アイデアそのものにトレンドや独自性がある場合には、「〇〇白書」のように各省庁が報告する統計・データや、民間企業が独自に調査した公開データなどの外部資料が、補足として添付されていれば、提案の説得力が増します。

販売促進イベントの場合、その実施によって見込まれる集客(購入客)数と売上高に目標数値を設定することが大切です。いわゆる「費用対効果」は重要なポイントですが、新商品発売キャンペーンなどの場合は、話題性の重視や認知度のアップを目的とした出費が多くなるため、イベント単独の収支は度外視するケースがあります。新店舗オープンの場合も同様で、「開店セール」と称して来店者に景品を進呈するなどのサービスが代表的です。

今回の場合は定期的な季節イベントであることが読み取れますので、過去の実施データや反省課題、提案などを参考にして企画立案されていることが重要です。

イベント実施の報告書作成においては、資料として客数や売上、経費などの集計数値を、前年比や目標比と併せてグラフ化して表示すると、増減や傾向がわかりやすくなります。その上で重要なことは、利用客アンケートなどの生の声を活かすことです。たとえば、テキストマイニング(→自由記述などのアンケートに出てくる言葉やワードを集計・分析する手法やデータ)を使ってまとめると、数値には表れないお客さまの感情面の特徴(ex.スタッフの笑顔が少ない、待ち時間が長い)が可視化されることもあり、次への改善のヒントになります。

今回のケースでもう一つ大切なのは、「売上高は目標を上回ったが、購入者数は目標を下回った」という事実を個別に受け止めた総括をしてしまうと、重要な事実を見逃す恐れがあることです。

この場合、客単価(購入客一人あたりの平均売上)を算出すると、目標から算出できる2,000円を上回る2,222円になるため、視点を変えればプラスの評価にもなるわけです。つまり、このイベントを継続する場合に、客単価を下げる結果になっても購入客数を増やすことを優先するのか、購入客数よりも売上や利益の向上を優先するのかを再考するデータとして捉えることもできます。

また、今回の資料のグラフを見るかぎり、購入者数、売上高が増えている日は、土日および祝日なので、「参加型アクティビティ」の開催効果がどの程度あったかまでは読み取れません。もしも前年同時期の同じ資料が併記されていて、数値の推移が比較できれば、効果の有無がはっきりするかもしれませんね。定期的に継続する販売促進イベントには欠かせない視点です。

データを分析して将来予測をすることは大切ですが、現状のまま進んで行けばどうなるかが大切なのではなく、データのどこに着目し、何を改善または工夫して行けば予測を上回るプラスの結果につなげられるかを探ることの方が重要です。経験者の意見に耳を傾け、チームで話し合い、時にはAIも有効に活用しながらプランを練っていくことが大切な時代になってきたと思います。

演習例
上記の問題6の<資料>を読み取って考えてみましょう。
1.
上記問題の選択肢ウにある「SNS映えするフォトスポット」を設置する場合の具体的なアイデアを自由に考えて(話し合って)みましょう。
2.
企画書にある「参加型アクティビティ」を会社のホームページで告知する前提で、それぞれのアクティビティの実施要領を自由に考えて(話し合って)みましょう。
(元 金沢星稜大学女子短期大学部教授 山本 航)
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