大阪医療福祉専門学校
専門知識のみならず社会への適応力を重視し、現代の医療現場に求められる事務職員を育成
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2002年に開校した大阪医療福祉専門学校は、理学・作業・言語療法のリハビリ系から視能訓練士まで幅広い専門職を育成するほか、今回取材に応じていただいた「医療総合学科」を設置しています。その中の「医療事務・ドクターズクラークコース」は、医療機関の顔として患者さんに接するだけに人間教育にも力を入れ、B検を活用した授業を行っています。授業内容や指導のポイントを聞きました。
接遇から社会人の基礎力へと段階的に人間教育を実施
医療事務・ドクターズクラークコースでは、医療事務および医師事務作業補助者として活躍できる両方の資格が取得できます。医師事務作業補助者とは、カルテや診断書の作成、診療に関するデータ整理や管理などを行う者で、一般に医療クラークやドクターズクラークと呼ばれています。従来、医師が担っていた事務業務を代行することにより、医師が診療に専念できる環境づくりに貢献するため、医師の働き方改革に伴う他職種へのタスクシフトが求められるなか、近年かなり需要が高まっている職業です。

長弘先生(左)、中川先生(右)
一方の医療事務は、病院やクリニックの「顔」として受付に立ち、患者対応をはじめ会計やレセプト業務を行います。「医療事務は受付、ドクターズクラークは診療室と、働く場所が違うだけでどちらも患者さんや医師など多くの人と接する仕事です」と指摘するのは医療総合学科の中川朱希子副学科長です。そのため4年前に新しく開設するにあたり、カリキュラム編成ではヒューマンスキルの涵養も重視し、役立つ検定をリサーチしたのがB検導入のきっかけです。「本学園(滋慶学園グループ)の建学の理念のひとつに、“人間教育”があります。専門学校として実学の教育はもちろん、社会人としての人間力を養う教育を行うことで、学生・保護者、産業界など関係者の信頼を得ることをめざしています。そこで、入学後すぐに接遇を学び、さらにレベルアップできる検定を探したところ、社会人に必要な仕事の基礎力を養うB検を見つけました。社会に出る最終教育機関にふさわしいと思い、履歴書に書けるレベルとして2級取得を目指すことにしました」と中川先生。1年次の8月にB検3級、12月に2級を受験しています。
自ら動き、社会の基準を知ることで学ぶべきことを自覚させる
B検を学ぶ「資格対策Ⅶ(ビジネス能力)」の授業は、まずオリエンテーションから始まります。「B検の内容や価値を私から説明するのではなく、HPなどから学生たちに調べさせています」と語るのは、授業を担当する長弘美澄先生です。なぜこの検定が必要なのか、どういう問題なのか、合格点は何点か、など、自ら疑問点を考え調べることにより、主体性を育むとともに取得に向け意欲を喚起させています。その後すぐに2級の過去問題を解かせ、自分に足りない知識やもっと伸ばす点を自覚させるなど実践的に指導しています。
1年次の後半からは実習が始まるため、実技には特に力を入れ、他の授業と重複する実技もありますが、ブラッシュアップを図っています。そのほかに、「報連相」や「8つの意識」「クレーム対応」といった実習に役立つ項目を重点的に学んでいきます。「いずれも医療現場を想定して、患者さん目線(顧客意識)や、病院にかかるコスト意識など、記憶に残るよう身近な事例とテキストを行き来しながら教えています」(長弘先生)。また「ビジネス用語」に関しては、自分の言葉で説明できるよう、年間を通してしっかりと学んでいきます。「B検を通して『社会人はこのくらい知っておかなきゃならないんだ』と、世の中の基準を知ることで、少しでも近づくよう努力してほしいと期待しています」。
学びを実践できる環境を活かし繰り返し定着を図る
医療総合学科には短大併修システムがあり、全学生が履修します。特別講義やスクーリングでのグループワーク等を通して、マネジメント力や問題解決力など、ここでも社会人に必要な考え方や知識を身につけます。自分の基準を社会と合わせておけば、職場に入ってから早く適応できるのではないかと考えています。また授業では医療従事者のためのコミュニケーションを学ぶ科目も充実しており、「複数の授業で複合的に勉強することにより、重要だということを学生も理解しますし、内容の定着も図れます」と長弘先生。
こうしたことから卒業生の現場適応力は高く、就職先の評判はもとより、「卒業生が顔を見せに来てくれるのですが、言葉遣いや気遣いも含めて話す内容に成長が感じられ、『これほど変わるなんて』と目を見張ります」と中川副学科長。長弘先生は「在校生の成長を感じる機会も多く、例えばオープンキャンパスでは学生スタッフが来場者を案内するマナーに他学科の教員が感心していました」とエピソードを披露してくれました。また同校では地域の福祉施設を訪問するなど、全校挙げてボランティア活動に積極的に取り組んでいるほか、医療人としての視野を広げるため海外研修も実施しています。「多様な人と関わるさまざまな場面があり、授業で学んだことを実践するこうした機会を活かして、私たちもその場で褒めたり、気付いたことはすぐに指摘したりといったフィードバックを繰り返して、自信をもてるよう声かけしています」(長弘先生)。医療に関わる専門的な知識は実際に医療現場で働いている講師からも教わることが多い一方で、B検の授業は専任教員が担当していることも特色のひとつと言えます。「常に学生の様子を見ることができますし、学生たちも社会人の先輩としていつでも気軽に質問できるようです」と長弘先生はその利点を語ります。
卒業生の就職先は総合病院が多く、「規模はさまざまですが、最初に総合病院を経験したほうが視野も広がり、その後、クリニックなどに行きやすいようです」と中川副学科長。医療事務か、ドクターズクラークか職種の選択は本人の希望を尊重していますが、両方ともできる資格を得ているだけに就職後もスムーズにキャリアチェンジできることが魅力です。医療現場で長く活躍し、患者さんや多職種に頼られる存在になる基盤としての基礎力を、B検の学びをはじめ全方位から培っています。
(取材日:2024年12月12日)